isozakiaiの呟き置き場(旧:愛のカラクリ、AI日記)

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大野左紀子『「女」が邪魔をする』(光文社)~伏せられた睫を見つめて

 先日の、Ohnoblog 2「本、差し上げます!」に一番乗りできましたv

 大野さま、どうもありがとうございます!


「女」が邪魔をする「女」が邪魔をする
(2009/06/25)
大野左紀子

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 外は曇り空、予報では来るという噂の台風の足音はまだ聞こえず、窓から吹きこむ風は心地いいくらい。そんな、ゆったりとした日曜の午後に本を開きました。

 ブログのプロフィール欄で見ていたときには、表紙がツルっとした風合いのものと勝手に思っていたのですが、違います。
 手にとってみると、とてもしっくりとして落ち着いた手触りで持ちやすい、です。
 表紙はぱっと目をひくピンク、それを開いて目にはいる遊び紙と本体(表紙裏)、その中表紙も黒。
 その黒い中表紙には白抜きで伏せられた睫毛が印刷されています。閉じた両目の中心から下、縦に(鼻のラインに、といったほうがわかりやすいかな?)、本のタイトルと著者名が並んでいます。
 でも、口は、ありません。

 女には、自らを語る必要はない、とでも云うように。

 もちろん、美的なデザイン感覚を重視して「口」を入れなかったのでしょうが、閉じた瞳とは、西洋美術史家の若桑みどりさんがどこかで書いてらしたように(出典を明らかにできないでスミマセン。見つけられたら、追記します)、鑑賞者が安心して対象を眺められるというお約束、了解です。「眠れる美女」を例にとるといいでしょうか? その無防備な姿を眺めるという「視線の暴力」を、相手(美女)に知られずにいられるというわけです。
 また、目を閉じるという行為は、なにかを「受け入れる」とき、「黙って従う」ときにしばしば見受けられる態度です。
 それともこれは、何かから目を閉じて見ないようにしているという徴でしょうか?
 うがちすぎ? 自意識の反映? はてさて。

 とにもかくにも、本を手にしたわたしは、う~む、と唸りました。
 この派手な、可愛らしいともいえる表側のピンク、そして内側(裏側)の漆黒。
 このアンビヴァレントこそが、「女」だよなあ、と。
 一筋縄ではいかんのですよ。
 「お取り扱い注意!」です。


 内容は、こちらの記事から、コピペのうえ、つけくわえささせていただきます。


  はじめに

 第一章 女であることの損得勘定  

 第二章 「女子」という自意識  

 第三章 男女は棲み分けしている

 第四章 すべてのファッションは女装である

 第五章 「男子にはわかるまい」のココロ

 第六章 恋愛ファシズム

 第七章 結婚をめぐる煩悩

 第八章 男の窮状と女嫌い

 第九章 「女」はどこにもいない

 第十章 中村うさぎという生き方

  あとがき



 中表紙をめくってすぐに、『はじめに』、があります。
 この最初の一行を目にした瞬間、わたしは、そうだそうだ、と頷きました。


 女子は、男子にはなれない。当たり前のことだ。


 これですよ、これ!
 わたしは物心つく前から「女の子なんだから」と親や学校や世間さまにずううううっと言われつづけ、会社でも「女性の立場からの意見を云々~」なんて期待されてきたので。
 女の子らしく言葉遣いは丁寧に、女の子らしく身だしなみは整えて、女の子らしく慎ましやかに、「女の子らしくオンナノコラシク」って魔法の呪文のように唱えられ、たしかにそうやってたほうが生きやすい部分もあるんだけど、「それってどうなの?」って一応は考えたりするわけですよ。
 現実のわたしはちぃいいいいとも、「女の子」らしくないのに!
 (というか、自分のことを「女の子らしいオンナノコ」って認識している(た)女友達ってわたしにはひとりもいないように思うんですけど! ルイトモで、そういうひとが集まるってことでしょうか? それともこれも「女」になりたくないという、ミソジニー?)

 それでも、親がそんなふうに躾るものでしたから、女の子らしく心身ともに「女装」したりもするのです。けれど、本性は小学生男子だったりするので、ときに素でものをいうと男の子から「ひとりでも平気そう」などと引かれ、独りになった途端にこっそりとへこんだり(笑)。

 そもそものところ、学校(学業)や会社(仕事)では「優秀であれ」と望まれながら、同時に「女性として可愛くあれ(容姿と性格双方共に!)」っていうダブルバインドというのか、やたら難易度の高い要求というのか、そうしたものにふりまわされて疲れきってヘトヘトでした。
 (よくよく考えなくとも、「そんなのわたしには無理だってば!」と返すべきなのでしょうが、出来るもの、やって当たり前だと思ってきて――いえ、思わされてきて(?)――しまったのですね。ふう……)

 とはいえ、今ここでルサンチマンいっぱいに文句をいってるけど、ほんとうのところ、はじめに言ったように、「女の子」でいて「得」をしてきたことやそれを故意に演出することでキモチイイことも山ほどあって、

「ああ、もう、考えるとアタマおかしくなるっ!!」

 っていうのが本音です。
 本書のなかにも出てくる「自意識のバケモノ」なもので(笑)。

 ほんともう、この第五章の『「男子にはわかるまい」のココロ』の「文化系女子」、そして「ややこしいアピール」のくだりは悶絶でした。イタい、です。胸かきむしる想い、顔から火、どころか噴煙噴火マグマどろどろ~ってな感じです。


 で、今わたしがゴシャゴシャ思い返してただ呻いて頭をふるふる振っているようなことを、きちんと整理して、冷静に、また時には面白おかしくつっこんだり、ご自身の過去をふりかえったりしながら、常に暖かい視線でみつめ、丁寧に語ってくれているのがこの本です。

 ふだんから大野さんのブログに通いつめているのですが、今回こうしてまとまった本を読ませてもらい、上述したように、正直なかなかシンドイ・苦しい・切ないところもあったのですが、そうした想いがあればこそいっそう語られる内容への興味や面白さで、あっという間に読み終えてしまいました。
 ブログの記事に大幅な加筆が加えられていて、その他に新しいトピックも増えているので問題意識がはっきりとして、章立てのタイトル、その小見出しに押し流されるように読み進みました。

 圧巻は第十章なのですが(これは、Ohnoblog 2 を読んでらっしゃる方ならもちろん、そうじゃない方にも絶対にゼッタイにおすすめです。あとがきもあわせて、「書く」こと、「書き続けること」の真髄がここにあります!)、個人的に大変刺激的だったのが、第九章の『「女」の記号を取り去って残るもの』です。
 わたし自身が昔、絵を描いていた体験と美術史を勉強した日々のなかで常々感じ、今現在、懸命に考えながら書こうとしていることを、明確にしめしてもらいました。
 「文化・藝術」というカテゴリーのなかの「絵画」の立場、虚構作品では、クリストファー・プリーストの『魔法』(早川書房)でもあらわされている概念です。
 それが、常に一方的に語られてきた側の女性自身の立場から発せられるのは小気味いいですし、またその込み入り具合や複雑さによってもたらされる緊迫感も倍増で、ドキドキして頁をめくりました。
(複雑さと書きましたが、難解という意味ではありません。歴史的な文脈を逸脱すること、越境の感覚、または鏡にうつした自己や相手の瞳の中にうつる自分を見る愉悦、そういうものが絡まりあっていると感じられたのです)

 それから、第七章の「家族を持つということ」を読み終えて、いったんわたしは本を置きました。深く、想うところがありました。この箇所は『結婚を巡る煩悩』という章だての最終見出しです。ここで紹介されている本を読んでみたくなりました。

 また、女性のことだけじゃなくて、男性のことも、書いてあります。
 わたしはこの本でいうところの「女」なので、男性の方がこの本をどんなふうに読まれるのか知りたいと、とても強く思いました。
 もちろん、あとがきにも触れられていましたが、男女の単純な二項対立じゃない豊かな性の視点もあるでしょう。ここで描かれているのは、恋愛ファシズムやら恋愛資本主義やら何やらかにやらを内面化してしまった多くの異性愛主義者の「女子(女性)」・「男子(男性)」で、ある意味ではマジョリティ側の問題意識が特権的に語られているというふうにも見えなくはないです。じっさい、じゃあソコにさえ入れないでいるひとは? という問題も残ります。
 ですが、
 

 実感を持って語ることはできない。


 というこの言葉にあるのは至極誠実な態度で、だからこそ、いまここにある現実の社会をうつとり、そこで生きていて「異性愛主義自体が厄介でかったるくて気持ち悪いように思いながらも、異性愛者であるわたし」のゴシャゴシャやモヤモヤ、かっこつけていうと懊悩とでもいえそうな感慨でさえも、すくいとってくれました。
 そのことに、深く、感謝しています。

 自分とその周囲を鑑みて、性を同じくする女性同士とはいえ、ことばがすぐに通じない状況に陥ることがあります。女のひとの人生には紆余曲折が多いので、それこそ「女女格差」とでもいうのでしょうか?――卒業してのち、就職・結婚・子供のあるなし、いっこいっこの選択で、怒濤に流されるようにまったく違う岸辺に立たされるような事実があります。以前は、すぐそばで、ちっちゃなため息ひとつ聞きもらさずにおしゃべりしてたのに、糸電話みたいなふうになってしまうことも、ある。

 そんななか。
 自分が悩みまくったことを同じように感じたり真剣に真摯に考えているひとがいる、そのことだけで、人間ってなんだかほっとしたりするものです。
 わたしにとって、この本は、そういう本です。


 さて、「女」であることに様々な屈託を抱え、「エビちゃん系女子」になるよう周囲から強要されながら、また自身でそのほうが楽だと自覚して、いっときはそうやってうまくいきそうになった(??)のに、何故だかやはり「文化系女子(年齢は無視してやってくださいまし)」にいきついてしまっているわたしとしては、この本のそこかしこで深く頷くばかりで、せっかく本書を頂戴したのになんだか申し訳ないようです。
 それで、アート好きで読書好きな「文化系女子」らしく、考えました。

 もうちょっと、本のつくりに遊びがあってもいいかな、と。

 この本は、章ごとの扉頁は奇数・偶数で「白・黒」と反転しています。それだけでも充分に凝っているのですが、ここまでやるならもっと遊んでもいいかも、と思ったり。
 たとえば、ときどき片目をつむってみせるとか、後ろにいくにつれて伏せていた瞼が少しずつうっすらとあがっていく、とか……。
 でもたぶん、開かれた「目」というものはとてもインパクトが強いので、あざとさや嫌らしさが出てしまい、本に対する好悪の感情がはっきりと分かれてしまうかもしれないですね。

 ただ、最後の章――わたしがいちばん凄いと思いながら読んだ最終章――は、目と目を見つめ合わせて大野さんの「語り」を聞きたかったという気もします。
 そこに、「対話」が生まれているような印象で。


 長くなりましたが最後に、

 二〇代でも三〇代でも同じようなことを感じ、考えていた部分はあったかもしれないが、その時に言語化しようとしても私にはうまくできなかっただろう。四〇すぎて、やっと少しはできるようになった。 


 という一文に、「アラフォー」のわたしは勇気をいただきました。
 そして、表紙に口はありませんが(笑)、

 私は語りたい。


 というこの言葉もまた、この胸にしっかりと刻みこまれました。

 素晴らしい御本、どうもありがとうございます。

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お詫びとお礼

8/30 15時47分に拍手くださった方へ。

ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
また、ご親切にお知らせいただき誠にありがとうございます。

いま現在、読めるようになっています。
修復が遅くなり、また、せっかくお読みいただいていたのに中途になってしまいすみませんでした。

引き続きお付き合いいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。



文学オタク

『夢詩壷』 番外編 「それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ」 2話 更新しました。

拍手や、アルファポリスの投票ありがとうございます!!
あちらで、今みてきたら「1位」でした!!(瞬間風速かも?)
きゃあああv
どうもありがとうございます~~~~


龍村兄さん大人気、というわけでもないんでしょうが(笑)。
サブカルには疎いが文学には詳しい「文学オタク」。
リアルでも、たま~に、お見かけします。
このひとみたいに、英仏独語くらいは操れるって羨ましいですねえ。


大学時代、助教授とか教授のおはなしを聞くのが好きでした。
いやもう、ほんっとに文学とか研究に自分の人生を捧げている方たちの情熱の熱く美しいこと!


そうそう、今日はせっかくなので、
小説家の小説本のご紹介を!


以前からなんども紹介しているのは、
龍村功兄さんのお誕生日をいただいた、この方!



エーコの文学講義―小説の森散策エーコの文学講義―小説の森散策
(1996/05)
ウンベルト・エーコ

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このラスト、エーコ先生の体験の美しさは、物語作者の持つ特権でしょう!
わたしは、羨ましすぎて泣きました(笑)。
大好きv
この本、小説や物語の好きな方は、お読みになると楽しいと思います。



自分の小説に悩みまくっていて更新できなかったわけですが、
だんだんヤケになってきました(笑)。

もちろん、丁寧には書いているつもりですけど、
その丁寧さが不親切になっていたとしても、
いまはもうそこはそのままどこまでできるかやっていこうという気持ちでいます。


物語は終わらないというのが、わたしのもっとも好きなことばなのかもしれないと、さいきん考えています。

さてさて、続き、がんばりますv


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Author:磯崎愛
オリジナル小説サイト『唐草銀河』(R18一部例外あり)の管理人・磯崎愛です。
SFとファンタジーと世界文学とアート好き。
わんこ狂い。特に北海道犬!
甘辛両刀(ニヤリ)。
がらくた銀河』なんてのもやってたり☆

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