isozakiaiの呟き置き場(旧:愛のカラクリ、AI日記)

彷徨ってますw ここにはツイッターおいときます。

反結婚・反女性文学の系譜としての『結婚十五の歓び』

champagnebuddhist_hiroさんより、以下のご質問(というよりつぶやき、でしょうか?)をお受けしました。

champagnebuddhist_hiro 新倉俊一, Erich Auerbach, writers, France そういえば、主にフランス知識人たちの言葉を集めた『世界毒舌大辞典』という本にも、女性に対する悪口がたくさん載っていました。あの国の伝統なんでしょうかね~。アウエルバッハ・・・『ミメーシス』ですか・・・

florentine(わたし) 新倉俊一(仏), せるくま はい、『ミメーシス』です/その辞典ものすごく面白そうですね!/「伝統」についてはわかりませんが、本書の解説に反結婚・反女性文学的系譜があったと思うので後ほど。

 愛のカラクリ、AI日記 フランス中世コント『結婚十五の歓び』ブクマ


「伝統」については、フランス文学史などその他もろもろがわからないとダメっぽいのでお手上げですが、
自分でも「系譜」については気になっていたので、本書「解説」から抜き書きしてみます。

結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)
(1979/01)
新倉 俊一

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 五、作品の系譜について

 一般に『結婚十五の歓び』は、テオフラストス(前三七一頃~二八七頃)、ユウェナリス(六五~一二八)、『ヨヴィニアヌスを叙す』の聖ヒエロニムス(三四〇~四二〇)、『七賢人物語』(十二世紀)、ウォルター・マップ(一二〇〇頃没)の作とされる『哲学者ルフィヌスに妻帯を戒める』、マテオルス『愁嘆賦』(仏訳は一三七一~七二)、ジャン・ド・マン作『バラ物語』(一二七五~八〇)、ユスタシュ・デシャン作『結婚照魔鏡』Eustache Deschamps:Le Miroir de Mriage(十四世紀末?)……と連綿として続く反結婚・反女性文学の系譜に連なるものとされている


ん~む、漢数字をアラビア数字になおすべきだったかな。縦書きを横にうつすとこういうことがある。
ま、それはおいて。
ヒエロニムス(WIKI)、この話題になると必ず名前のあがる聖人ですね。
テオフラストスは、アリストテレスの後継者です。ってことは今回ぐぐってわかりました。わたし、ほんと哲学とか思想とか科学とか弱いなあ。
ユヴェナリスは例の「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」とかいう有名人なのですが(このひとは知ってたよ! エヘン)、これ(ユウェエナリスWIKI)、おお、よかった、ちゃんと「誤用」について書いてあった。ぜひ読みにいってください。
風刺詩人ですからね。出典にあたるというだけじゃなくて(ラテン語なんて読めないよ!)、風刺詩人のいうことを直球で受け止めると変なはなしになってしまうのです。って、大学で聴いた気がする(だから覚えてたってオチ)。

そうだ、大事なことを。
『結婚十五の歓び』の成立は、「十四世紀末から十五世紀初頭」にあたるそうです。
大雑把に、ジャンヌ・ダルク(1412年1月6日 - 1431年5月30日)の生まれたころにはあったって言っちゃってもいいかしら。

そして、今回この調べモノをした最大の収穫!


七賢人物語七賢人物語
(1999/12)
西村 正身

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で、出てるんですか、翻訳が!!
なんという僥倖!
これ、どこかで名前を見て以来、ずっと気になってたの!! うわあ、凄い!!
ああ、嬉しいなあ。

それから、今回の「反女性主義文学」の流れは、おそらく、これを読むとイチバンなのだろうなという本を見つけました。

ジャンキンの悪妻の書―中世のアンティフェミニズム文学伝統ジャンキンの悪妻の書―中世のアンティフェミニズム文学伝統
(2006/07)
ウォルター マップテオフラストゥス

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とはいえ、なんだかムカつきそうだから読まないかも(笑)。
鷹揚な気持ちのときにでも、手にとってみましょうかねえ。

あ、せっかくだから、薔薇物語、今回は未知谷版をのせましょう。
わたし、こちらは未読なのです。


薔薇物語薔薇物語
(1995/05)
ギヨーム・ド・ロリスジャン・ド・マン

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表紙が出なかった。ガッカリ。

さて、はなしを戻しまして、ミソジニーや反婚思想について。
わたしが個人的に面白いと思っているのは、この文。


 しかしながら、一口に反女性主義、反婚主義と言っても、そこにはさまざまなニュアンスの差がある。


この、ニュアンスの差の部分、ですね。

たとえば、ここでいう「聖職者流の反女性主義」、ならびにそれがゆえの「反結婚主義」というのは、ちょっとでもキリスト教中世について知っていれば、すぐさま納得できる。「誘惑者」「罪深い存在」としての女性像がそこに満ち溢れていることに気づくからです。「性を忌避」するがゆえに、そしてとりあえず「種の保存のため」の「結婚」をどうにか許容するという姿勢なので、そうなってしまうんだろうなあって、容易に想像がつく。その、是非はともかくね。
わたしは女性だから、あのねえ、勝手に決め付けてひとのせいにしないでよって思いますが(笑)。


こうした反女性主義が変わるときがきます。いわゆる、十二世紀ルネサンス時代。

 これに対して、十二世紀に入ると、非聖職者による反婚主義が輪郭を鮮明にしてくる。たとえば、愛人の解任を知り、結婚することで事態の収拾を計るアベラールに向い、「結婚がもたらす不名誉……それから生ずる障害」を説くエロイーズの主張に、それは最も雄弁に代表されている。


ご承知のとおり、そして新倉さんも書いているように、エロイーズにしてもアベラールにしても、けっして「反女性主義」ではないわけで。

 このような非聖職者型の、反女性主義と結びつかぬ反結婚主義は、聖ベルナルドゥスによって、その跳ねあがりぶりを強く非難されていた「新しきバビロン」の知識人のみ見出されるものではない。


跳ねあがりぶり、いい言葉だなあ。どっかで使わせてもらおうv
ここらへんの捩れっぷりが、「宮廷風恋愛」という、真実の愛は結婚外にあるとする風潮と結びつき、または昨今の「恋愛至上主義」みたいな有り様の遠い先祖でありましょうかしら?

まあでも、ひとこと言えるのは、いずれにせよ、当時の恋愛は「身分」なり「容姿」なり「頭脳」なり「こころばえ」なり(それらすべて)が飛びぬけていないと成立しない、きわめてまっとうな恋愛感だったと思われます。
あえていえば、美人で心ばえ清らかな城主夫人と、強く勇敢な若人たる騎士であるがゆえに華やかな恋愛の舞台に立てるわけで、平民はそこから除外されている。誰もが「恋愛」出来るものではないのです。

しかも、ここが眼目ですが、じっさいに不貞を働けば恐らく死罪です!! 
「ポンチュー伯息女の物語」を思い出してください。奥方と雇い入れた騎士が不倫したら、城主に対する反逆罪ですよね。う~む。恐ろしい、この裏返りまくった構造!
(ちなみに、新倉俊一さんの『中世を旅する 奇蹟と愛と死と』では、こうした宮廷風恋愛物語は血気に逸る無教養な若者騎士達を洗練された文化人・宮廷人にするための教養小説的冒険物語説(G・デュビー)も紹介されています。
それから余談ですが、アベラールの名前と聖ベルナール(ベルナルドゥス)の名前か出たところで、この甘美なる宮廷風恋愛の開花には、イスラム・スペインの宮廷文化、つまりは積極的に東方の書物を訳させたクリュニー修道院の尊者ピエールの果たした役割は大きいとメモっときます。ダンテ関連も含めて。
そして、わたしの好きなシュジェの名前もオマケに並べておこう! わ~い、十二世紀ルネサンス万歳!)

さらに、『薔薇物語』においては、

 要するに、ジャン・ド・マンの立場は、聖職者流の反結婚・反女性主義でもなければ、非聖職者型の反結婚、女性肯定もしくは崇拝主義のいずれでもない。


とされていて、ここらへんが、現代的な感性と通じるのではないかなあと思ったり。
もちろん、ジャン・ド・マンは反女性・女性蔑視的な作家ではあるんですけどね。女のひとは好きだけど馬鹿にしてて、性欲に忌避感もないから女性を攻略するのに気後れはないって感じなのかな。
このひと、いまの言葉でいうと「モテ」なんでしょうね~。

それでもって、いちお、『結婚十五の歓び』について結論的なものを記せば、

 反婚主義であることは明白である。(略)……その意味ではこの作品もまた反女性主義の系譜に連なる、とみなしてよいだろう。ただし、伝統的な聖職者流の反結婚・反女性主義とやや趣を異にしている点は、結婚生活の悲惨を描くに際して、女性にのみ怨恨や憎悪の視線を向けるかわりに、このような悲惨のよって来たるところがついに理解できぬ夫たちの愚昧を、容赦なく批判し、嘲弄していることであろうか。


この男性批判は重要だと思っています。

ここで、冒頭のご質問「伝統」に戻ります。
中世カトリックの反女性主義的「伝統」が続いていると考えればそうも受け取れるし、文学者は過去においてたいてい男性であるので他者である「女性」が批判対象に上がり「ミソジニー」が顕著にあらわれるとも言えそうですし、難しいですね。
さらに深刻なのは、フランス宮廷恋愛風の女性賛美や崇拝も、裏を返せば女性蔑視の反動であるということでしょうか。「客体」である以上は、そのどちらからも自由にはなり得ない。

とはいえ、フランス国には才女(プレシューズ)擁するサロン文化の発祥の地でもありますし、啓蒙主義時代のパトロンには女性の名前が連なる良き「伝統」もあると、弁護しておこうかなあっと(笑)。

少なくとも、フランスは、男女の素晴らしい恋愛物語と恋愛詩を生産してきた、また今もしている国家ですからね。


オチは、この一冊でいきましょうかね。


トルバドゥール恋愛詩選トルバドゥール恋愛詩選
(1996/01)
沓掛 良彦

商品詳細を見る

 内容(「BOOK」データベースより)
 中世南仏の地を中心に花開いた詩歌芸術の粋を蒐める最大の邦訳アンソロジー。37名、50篇を選りすぐるとともに、「古伝」および「作品解題」をも訳出、併せて詩人名鑑・略伝・作品略解、長文解説「トルバドゥールと「みやびの愛」」などを収める決定版。


こういう高貴な美しい女性を崇拝しまくる恋愛は、「ツンデレ」好きとかいう男性のこころもちと、根はさほど変わらないのじゃないかと想像したりもします。
結論は、好きなひとには「詩」または「手紙」を書くといいよってことで。
今日の記事はおひらき~。




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フランス中世コント『結婚十五の歓び』

結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)
(1979/01)
新倉 俊一

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え~と、これ、どうご紹介しようかなあ。
「晩婚化、非婚の時代に読まれるべき、反婚の書」かしら?
結論から言えば、

「これ読んで結婚したくなる男性はおそらくマゾです」

ってあたりが妥当でしょうか??
あ、これじゃ読みたくなりませんよね。
困ったな。
んと、じゃあ。


「これ読むと、妻という立場の人間がいったい何を考えているかわかるかも」


これで、どうだ?
って待てよ。
ここに出てくる女性はみんな悪者なんだから、オンナとは「悪」なりと認めたようなものじゃないかと突っ込まれたら困るなあ。


まあでも、それは時代背景ってやつです。
フランス中世キリスト教社会というところは男性上位、女性蔑視の世界でもありますから当然のことなんですが、ここにあるのは、妻の浮気に浪費癖、嘘偽り、ヒステリーなどなどなど、妻というもの、女というものは、性悪で権高で嘘吐きだと決め付けてあるんですよ。
いまで言う「スイーツ(笑)」とかにあらわれる揶揄や女性蔑視そのものかも。

いやはや、こうまで女性(妻)を悪く書かれると、
「悪者上等!」な気分で、
わたくし、いっそスッキリいたしますわね。
なにしろ、これは歴としたパロディ作品なのです。


 『結婚十五の歓び』――この一見結婚を賛美するような、そしてほとんど官能的ですらある題名が、実は「聖処女の受け給いしと覚しき大法悦」に因み、十三世紀にいくつも作られてきた「美しきもまた敬虔なる祈祷文」(たとえば『聖母の十五の歓び』)のパロディであること、

 ……解説冒頭から抜粋


かたいっぽうで讃えあげ、もうかたほうでこき下ろす。同じみのアレです。
だから、これ読んで、「女嫌い(ミソジニー)」になるのは、おかしいですよねえ。
悪意をもとに書かれてるわけですから。

でも、ね。
先ほどのお勧めワードに基づいて、ある一面では、「夫婦」「結婚生活」の真実もここには存在しているように思います。

「着る服がない」

って言い出す女のひと、今もいるんじゃないかな?
そのほか、女性のわたしはドキっとする態度や言葉がいくつかあったと正直に告白しておきます。


あ、それからSIMPLETON氏、
これを読まないと、例のエロイーズのあの熱烈たる台詞の本当の意味はおわかりになりませんわよ、と言い添えておきますわ。
そして自分には、「アウエルバッハ読みなさい」と言いつけておきますです。


サイトのほうとこちらに拍手いただきましてありがとうございます。
なかなか連載再開できずすみません。
しかも、6号の原稿まったく一行も書けてないし!
(うぎゃああ、どうなるの、わたし?)


まあ、がんばります。



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オリジナル小説サイト『唐草銀河』(R18一部例外あり)の管理人・磯崎愛です。
SFとファンタジーと世界文学とアート好き。
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